今回の逃亡犯条例の改正に関するデモの影響で、香港の金融機関に預けている資金を引きあげられている方もいらっしゃるようです。
また引きあげには至らなくても、ご心配されている方も多いと思います。
正直なところ、カントリーリスクに関しては、『わからない』というのが答えです。
そして、その大前提がある上で、世の中にはいい加減な情報も多いので、一つ一つの事実確認を行いながら、判断すべきだと思います。
実際に1997年7月1日の返還前に、中国政府から財産を没収されると慌てふためき、財産を投げ売りしてしまい、その後に後悔された方もいますし、その投げ売りされた資産を買い、大きな富を得た方もいます。
分かることは下記のようなことです。
・香港は1997年すなわち約20年前より中国の一部であること。
・中国政府にとっても世界三大金融センターの一つであり、世界の最新情報とお金が集まる香港は重要な拠点であること。
・香港の自由を奪うことで、香港の活力が損なわれることは中国政府にとっても不都合であること。
・返還後も経済自由度指数で世界一の座を維持していること。
・現在の中国では香港に限らず中国内でも私有財産の保有を認めていること。
・上記は過去のことで、将来はわからないこと。
そして毎度のことですが、本来は中立であるべき報道が、一方の意見だけを取り上げることに問題を感じます。
先ずは賛成派と反対派のそれぞれの考え方をしっかりと知ることが大切なのだと思います。
反対派の意見については多くの方がご存知かと思います。
仮に犯罪とは無縁の善良な一般市民であったとしても、冤罪で中国政府に引き渡しされる可能性がゼロでは無くなるわけですので、法改正を怖れるのは当然と言えます。
ましてや、政治や経済の中心にいる方々は、我々の想像以上に怖いのだと思います。
一方で、ご存知ない方もいらっしゃるようなのですが、香港人でも逃亡犯条例の改正に賛成の人もいます。
それは中国政府の言い成りだからというわけではありません。
その理由は、中国で犯罪を行い香港に戻ってきた犯罪者を、現在の香港の法律では裁くことが出来ないからです。
実際に昨年、台湾(※香港の立場だと中国の一部)で交際相手を殺害遺棄したことが明らかな殺人犯を、殺人罪で訴追することが出来ませんでした。
改正しないと、中国内の凶悪犯が香港に逃げてきても指を咥えているだけで野放しとなり、安全な社会(現時点では日本より犯罪率が低いです。)を維持できなくなるかも知れません。
いずれにせよ、香港では大勢の若者たちが国家の将来を自分事とし本気で思い、実際に行動しています。
一定の発展を遂げると、そのような力、いわゆるハングリー精神を失いがちですが、今回の香港人の若者の行動をみて、香港の底力を感じています。
メディアが取り上げるような衝撃的なシーンのイメージで、香港旅行を控える方が増えると、香港のメイン産業のひとつである観光業に影響がでて、学生たちのデモを応援する人が減ってしまいます。
国のことを思う若者を陰ながら支援するためにも、しっかりとした情報をもとに判断して頂きたいと思います。